ヴィンテージロレックスの中でも、ロレックス エクスプローラーI Ref.1016は特別な存在です。
一見すると、ブラックダイヤルに「3・6・9」を配したシンプルな3針モデル。
サブマリーナーのような回転ベゼルもなく、GMTマスターのような24時間針もありません。
それでも、ヴィンテージロレックスを深く知るほど、Ref.1016の奥深さに惹かれていきます。
その理由の一つが、ダイヤルの種類の多さです。
同じ「Ref.1016」であっても、製造された年代によってダイヤルの表情が大きく異なります。
初期には、艶のあるブラックにゴールドの文字が映えるミラーダイヤル。
そして、その後に登場する、艶を抑えたブラックダイヤルのマットダイヤル。
さらに、そのミラー、マットの中にも複数のバリエーションが存在します。
王冠の形。
「3・6・9」のフォント。
「EXPLORER」の文字。
チャプターリングの有無。
6時位置のドット。
ダイヤルの艶。
夜光。
こうした細かな違いを見ていくと、同じ1016とは思えないほど、それぞれの個体に個性があることが分かります。
この記事では、ヴィンテージロレックスを選ぶうえで特に重要な、Ref.1016のミラーダイヤルとマットダイヤルの種類について、できるだけ分かりやすく解説します。
ロレックス エクスプローラーI Ref.1016とは
Ref.1016は、エクスプローラーIを代表するヴィンテージロレックスです。
おおむね1960年代から1980年代末まで長く生産されたリファレンスで、その長い生産期間の中で、ダイヤルやムーブメントなどにさまざまな変化が見られます。資料によって生産開始・終了年の表現には差がありますが、約30年にわたるロングセラーとして知られています。
Ref.1016を面白くしているのは、単に「古いエクスプローラー」ということではありません。
長い生産期間の中で、少しずつ仕様が変化していったこと。
そして、その変化を現在でも実物から確認できることです。
その中でも、特にコレクターの関心を集めるのが、
「ミラーダイヤルなのか、マットダイヤルなのか」
という違いです。
Ref.1016のダイヤルは大きく「ミラー」と「マット」
Ref.1016のダイヤルを大きく分けると、初期のミラーダイヤルと、後年のマットダイヤルがあります。
ミラーダイヤルは、文字盤表面に艶があり、光を受けると鏡のように反射することから「ミラー」と呼ばれています。
さらに文字や王冠などにゴールド系の色が見られるため、海外では**Gilt Dial(ギルトダイヤル)**と呼ばれることもあります。
一方、マットダイヤルは艶を抑えたブラックダイヤル。
ミラーに比べると、より無骨で実用時計らしい印象があります。
この2種類は、同じRef.1016でありながら、時計全体の雰囲気が大きく異なります。
まず知っておきたい「ミラーダイヤル」
Ref.1016の初期モデルを語るうえで、ミラーダイヤルは欠かせません。
ミラーダイヤルの最大の特徴は、何と言ってもその艶です。
ブラックの文字盤が光を受けると、深い光沢を見せる。
そこにゴールドの文字や王冠が重なることで、非常に美しいコントラストが生まれます。
現行ロレックスにはない、ヴィンテージロレックス独特の色気です。
さらに、ミラーダイヤルには大きく、
サークルミラーダイヤル
と
ノンサークルのミラーダイヤル
があります。
海外では、サークルミラーをGilt Chapter Ring Dial、ノンサークルのミラーをGilt Non Chapter Ring Dialと呼ぶことがあります。
サークルミラーダイヤルとは
サークルミラーダイヤルは、文字盤の外周に沿って円状のライン、いわゆるチャプターリングが見られるタイプです。
おおむね1960~1964年頃の初期Ref.1016に見られ、さらにこのサークルミラーの中にも複数のダイヤルバリエーションがあります。
ここからがRef.1016の面白いところです。
「サークルミラー」という一つの種類で終わりではありません。
コレクターの間では、さらにMark 1~Mark 4というように分類して見ていきます。
サークルミラー Mark 1
非常に初期のサークルミラーダイヤルとして知られるのがMark 1です。
特に注目されるのが、6時位置のクロノメーター表記。
通常の
SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED
ではなく、
OFFICIALLY CERTIFIED CHRONOMETER
という表記が入る、いわゆるOCCダイヤルが存在します。
このタイプは非常に希少で、実物を見る機会も多くありません。
また、初期のMark 1には「ファットルミナス」と呼ばれる、3・6・9の夜光部分が太く見える個体も知られています。
1016の初期個体を研究するなら、こうした細かな違いまで見ていく必要があります。
サークルミラー Mark 2
Mark 2はMark 1に比較的近い雰囲気を持つダイヤルです。
6時位置のクロノメーター表記などに変化が見られ、初期ミラーから次の段階へ移っていく過程を感じさせます。
1016のミラーダイヤルは、このように一気に別のデザインへ変わるのではなく、細かな変更を重ねながら変化していきました。
ここを知ると、Ref.1016を見る楽しみが一気に増します。
サークルミラー Mark 3
Mark 3では、王冠の形状が重要なポイントになります。
王冠に特徴的なくびれが見られ、文字の形にも初期ダイヤルとは違った印象があります。
1016のダイヤルを見る際には、単純に「ミラーだからOK」と判断するのではなく、
王冠の形
文字の形
チャプターリング
3・6・9
などを総合的に見ることが大切です。
サークルミラー Mark 4
サークルミラーの中でも、特徴的なのがMark 4です。
王冠が縦長に見えることに加え、**6時位置の「6」の下に小さな夜光ドットが入る「6時ドット」**が特徴として挙げられます。
こうした小さなディテールは、遠目から見ただけでは分かりません。
しかし、ヴィンテージロレックスの世界では、このような細部こそが非常に重要です。
サークルミラーとCal.1560
サークルミラーダイヤルの時代には、Cal.1560が搭載されます。
さらに初期の個体では、ローターにも特徴的な仕様が見られるものがあります。
また、この時代にはラジウムからトリチウムへ夜光素材が移行していく過渡期もあり、ダイヤルにアンダーバーが見られる個体もあります。
つまり、ダイヤルだけを見るのではなく、
ダイヤル+夜光+シリアル+ムーブメント
を一緒に見ることが、ヴィンテージ1016を理解するうえで非常に重要になります。
ノンサークルのミラーダイヤル
サークルミラーの後に登場するのが、チャプターリングを持たないノンサークルのミラーダイヤルです。
おおむね1964~1966年頃の短い期間に見られ、資料上ではMark 1~Mark 3に分類されています。
この時期は生産期間が短いこともあり、現在では希少性の高いダイヤルとして注目されています。
ノンサークルミラー Mark 1
1964年頃のダイヤルとして整理されるタイプです。
このタイプにもアンダーバーが見られる個体があります。
ムーブメントはCal.1560の時代です。
ノンサークルミラー Mark 2
1965年頃のタイプ。
特徴として挙げられるのが、王冠のくびれと、EXPLORERの「R」の最後の形です。
こうした文字の細かな違いは、1016のダイヤルを見分ける際の重要なポイントになります。
ノンサークルミラー Mark 3
1966年頃のタイプ。
Mark 2と同様にEXPLORERの「R」に特徴があり、さらにこの時期はCal.1560からCal.1570へ移行していく過渡期ともされています。
つまり、ミラーダイヤルの種類を覚えるだけではなく、ムーブメントまで合わせて考えることで、その個体の背景がより見えてきます。
ミラーダイヤルには「トロピカル」という楽しみもある
ミラーダイヤルを語るとき、もう一つ忘れてはいけないのがトロピカルダイヤルです。
長い年月による経年変化によって、ブラックだったダイヤルがブラウン系へ変化した個体があります。
これが一般に「トロピカル」と呼ばれるものです。
しかし、すべてのトロピカルが同じ表情になるわけではありません。
全体が均一にブラウンへ変化するもの。
一部だけ色が変わるもの。
濃淡が生まれるもの。
その表情は個体によってさまざまです。
そのため、自然で美しいトロピカルダイヤルは、コレクターから非常に高い関心を集めます。
ここにもヴィンテージロレックスの面白さがあります。
新品では絶対に作れない色。
長い年月を経た個体だからこそ生まれる色です。
そしてマットダイヤルへ
Ref.1016の歴史を語るうえで大きな転換点となるのが、ミラーダイヤルからマットダイヤルへの移行です。
資料では、マットダイヤルは1967年頃から見られると整理されています。
艶のあるミラーから、艶を抑えたマットへ。
ゴールドの印象が強いミラーから、白いプリントを中心としたマットへ。
時計全体の雰囲気は大きく変わります。
ミラーが「色気」なら、マットは「道具感」。
ミラーが「艶」なら、マットは「無骨さ」。
この違いを知ると、同じ1016でも好みが分かれる理由がよく分かります。
Ref.1016 マットダイヤル Mark 1
マットダイヤルの中でも、非常に有名なのがMark 1です。
最大の特徴は、12時位置のロレックスの王冠。
カエルの足のように見える独特の形状から、コレクターの間では**「フロッグフット」あるいは「フロッグレッグ」**と呼ばれています。
この王冠を見るだけでも、通常のマットダイヤルとは違うことが分かります。
さらにMark 1の初期には、3・6・9の数字が太く見えるファットルミナスと呼ばれる個体もあります。
Mark 1のフロッグフットは1016を代表するディテール
Ref.1016を語るとき、フロッグフットは非常に重要なキーワードです。
ロレックスの王冠は現在でもブランドを象徴するマークですが、ヴィンテージロレックスでは年代によってその形が大きく異なります。
そのため、
「王冠を見る」
ことは、1016のダイヤルを見るうえで基本中の基本です。
文字盤全体を見て終わりではありません。
王冠を拡大して見る。
3・6・9を見る。
EXPLORERを見る。
そして全体のバランスを見る。
これがヴィンテージ1016を見る楽しさです。
Ref.1016 マットダイヤル Mark 2
Mark 2は、おおむね1967年頃の短い時期に見られるタイプとして整理されています。
特徴的なのは、圧縮されたように見える王冠。
Mark 1と年代が重なる部分があり、比較的短い期間の仕様とされるため、個体数の少なさも注目されるポイントです。
また、初期マットダイヤルでありながら、最後期のミラーダイヤルに近い王冠の雰囲気を感じさせる点も面白いところです。
Ref.1016 マットダイヤル Mark 3
Mark 3は、1016の中でも比較的長い期間にわたって見られるタイプです。
資料では1970年代中盤と、1980年代の個体にも同系統の王冠が見られると整理されています。
また、1970年代の初期の個体では夜光が黄色く経年変化したものが見られる一方、1980年代の個体では白っぽい印象のものが多いとされています。
ここでも、
同じMarkでも、製造された時期によって見え方が違う
という、1016の奥深さが出てきます。
Ref.1016 マットダイヤル Mark 4
Mark 4の特徴として挙げられるのが、背の高い王冠です。
Mark 3とは王冠の形状を比較すると違いが分かりやすく、1016のマットダイヤルを見分ける際のポイントになります。
こうした王冠の違いは、写真を少し離れて見るだけでは分かりにくいものです。
だからこそ、ヴィンテージロレックスのダイヤルを見るときには、写真を拡大して細部を見ることが重要になります。
Ref.1016 マットダイヤル Mark 5
Mark 5は後年のマットダイヤル。
資料ではおおむね1980~1988年頃の個体として整理されています。
一見するとMark 3に似ています。
しかし、見分けるポイントとして挙げられるのがEXPLORERの「L」の位置です。
このように、王冠だけではなく文字の配置まで見ていくと、マットダイヤルの細かな違いが分かるようになります。
Ref.1016にはサービスダイヤルも存在する
もう一つ忘れてはいけないのが、サービスダイヤルです。
資料では、フロッグフットに似た王冠を持ちながら、Mark 1とは異なり王冠にくびれがないタイプが紹介されています。
また、ルミノバを使用したサービスダイヤルも存在します。
ここで注意したいのは、
「サービスダイヤル=すべて同じ」
ではないということ。
実際のヴィンテージロレックスを見るときには、ダイヤルだけではなく、夜光、針、ケース、ムーブメントなどを総合的に確認する必要があります。
Ref.1016のダイヤルを見分けるとき、どこを見るべきか
ここまで読んでいただくと、1016のダイヤルを見るポイントが見えてきます。
特に重要なのは次の部分です。
① 王冠
Markによって王冠の形が違います。
フロッグフット。
圧縮されたような王冠。
くびれのある王冠。
背の高い王冠。
まず王冠を見ることが、1016のダイヤル判別の基本です。
② チャプターリング
ミラーかどうかを見るだけでなく、サークルミラーなのか、ノンサークルミラーなのかを確認します。
これはRef.1016のミラーダイヤルを語るうえで非常に重要なポイントです。
③ 3・6・9
数字の大きさ、フォント、夜光の入り方などを確認します。
特に初期マットダイヤルには、ファットルミナスと呼ばれる特徴的な個体があります。
④ EXPLORERの文字
文字の形や位置にも年代ごとの特徴があります。
特に後年のMarkでは「L」の位置などが判別ポイントとして挙げられています。
⑤ 6時位置のクロノメーター表記
ミラーの初期個体では、OCCと呼ばれる特徴的な表記があります。
この部分を見ることで、ダイヤルの年代や種類を考える手掛かりになります。
⑥ 6時ドット
サークルミラーの一部には、6の下に小さな夜光ドットが見られるタイプがあります。
非常に小さな特徴ですが、こうしたディテールこそヴィンテージロレックスの面白さです。
ダイヤルだけで年代を決めてはいけない
ここは非常に重要です。
ヴィンテージロレックスを見ていると、
「このダイヤルだから○年」
と単純に判断したくなります。
しかし、実際の個体を評価するときには、それだけでは不十分です。
シリアルナンバー
ダイヤル
針
夜光
ムーブメント
ケース
ブレスレット
これらを総合的に見る必要があります。
例えばRef.1016では、Cal.1560からCal.1570への移行もダイヤルの変化と重なります。
資料では、Cal.1560はおおむね1965年頃まで、Cal.1570は1965~72年頃にノンハック、その後ハック付きへ移行したという整理がされています。
また、ミラーダイヤルの最終期にはCal.1560とCal.1570の移行期にあたる個体もあります。
だからこそ、ダイヤルだけで判断しないことが重要なのです。
ミラーとマット、どちらが魅力的なのか
これは好みが分かれるところです。
ミラーダイヤルには、
艶
ゴールドレター
経年変化
トロピカル
という魅力があります。
一方、マットダイヤルには、
無骨さ
道具感
3・6・9の存在感
王冠のバリエーション
という魅力があります。
どちらが優れているという話ではありません。
むしろ、同じRef.1016というモデルの中で、ここまで違った表情を楽しめること自体が魅力なのです。
コルリオーネが見るRef.1016
コルリオーネでは、Ref.1016を見るときに、単純に「ミラーだから良い」「マットだから良い」とは考えません。
大切なのは、その個体がどのような状態で現在まで残っているかです。
例えばミラーダイヤルなら、
艶の残り方。
ゴールドレターの状態。
トロピカルの色味。
チャプターリング。
王冠。
夜光。
ケース。
それぞれを確認します。
マットダイヤルなら、
Markの特徴。
王冠の形。
3・6・9。
EXPLORERの文字。
夜光。
ケースのエッジ。
そしてムーブメント。
細かな部分まで見ていくことで、その1016が持つ本当の魅力が見えてきます。
ヴィンテージロレックスは「同じものがない」から面白い
現行モデルであれば、同じリファレンスなら基本的には同じ仕様です。
しかしヴィンテージロレックスは違います。
同じRef.1016でも、
ミラーなのか。
マットなのか。
サークルミラーなのか。
ノンサークルミラーなのか。
Mark 1なのか。
Mark 4なのか。
夜光はどうなのか。
ケースはどの程度残っているのか。
経年変化はどうなのか。
一本一本に違いがあります。
その違いを知れば知るほど、時計を見る目が変わってきます。
そして、最終的にはスペック表だけでは表現できない、
「この一本はいい」
という感覚にたどり着きます。
まとめ|Ref.1016はダイヤルを知るほど面白くなる
ロレックス エクスプローラーI Ref.1016は、シンプルな3針時計です。
しかし、そのダイヤルには長い歴史があります。
初期のサークルミラーダイヤル。
ノンサークルのミラーダイヤル。
そしてマットダイヤル。
さらに、その中にもMark 1、Mark 2、Mark 3……とさまざまな違いがあります。
王冠を見る。
3・6・9を見る。
EXPLORERを見る。
チャプターリングを見る。
6時位置を見る。
夜光を見る。
そして、シリアルやムーブメントと照らし合わせる。
そこまで見て初めて、一つのRef.1016が持つ個性が分かります。
だから、1016は面白い。
単純に「古いエクスプローラー」ではありません。
約30年という長い歴史の中で、少しずつ姿を変えながら現在まで残ってきたヴィンテージロレックスです。
ミラーダイヤルの艶やかな色気に惹かれるのか。
トロピカルダイヤルの唯一無二の経年変化に惹かれるのか。
フロッグフットを持つ初期マットに惹かれるのか。
あるいは、後年のマットダイヤルが持つ無骨な道具感に惹かれるのか。
どの1016を選ぶかによって、その人のヴィンテージロレックスに対する好みまで見えてくる。
それも、Ref.1016という時計の大きな魅力だと思います。
コルリオーネでは、単に「希少だから」「古いから」という理由だけではなく、ダイヤル、ケース、針、夜光、ムーブメントまで一つひとつを確認し、その個体ならではの魅力を見極めることを大切にしています。
Ref.1016を探すなら、ぜひ数字だけではなく、ダイヤルの細部まで見てみてください。
そこには、ヴィンテージロレックスならではの奥深い世界があります。